筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

7月8日 自分たちで育てた野菜

 7月4日(木)の夕刻、小3が宿泊学習のためデモホームにお泊りするということで、様子をのぞきに行きました。すると、ちょうど夕食時で、みんなで作ったカレーライスを食べるところでした。
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 テーブル脇のホワイトボードを見ると、カレーを作る手順と、誰が何の野菜を切るのか、その分担が書かれていました。みんながカレーライスをおいしそうに頬張る様子を眺めていると、このカレーの中に入っているナスとジャガイモは、学級で育てたもので、収穫したばかりの新鮮野菜だと担任の先生が教えてくれました。小3の様子を同じくのぞきに来ていた幼稚部のM先生が、カレーライスを少し味見させてもらうことになり、「Mちゃんの切ったタマネギの味はどうかな・・・? あ~おいしい!」「Iくんの切ったナスの味はどうだろう・・・? あ~、これもおいしい!」といった感じで、味の感想を子供たちに順番に返していかれました。いつもは野菜の苦手な子も、「自分たちの育てた野菜だと食べるんですよね」と担任の先生が、子供たちのいつもと違う様子を教えてくれました。
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 この様子を見ていて、私は十数年前の経験を思い出していました。当時、大ベテランの先輩S先生と一緒に、私は重複学級の担任をしていて、同じように学級園で子供たちと野菜(ナス、キュウリ、プチトマトなど)を一緒に育てていました。その学級には、小柄で食事量が少ないTくんという小1の男の子がいて、野菜が大の苦手でした。そんなTくんでしたが、自分が水やりして育てた野菜の収穫をとても喜び、両手に持った野菜を見つめる眼差しは慈しむような感じでした。教室に訪れる先生を見つけては、「オレの育てた野菜!」と自慢し、誇らしげだったのがとても印象に残っています。

 そんなTくんの様子を見て、一緒に担任を組んでいたS先生は、いろいろチャレンジさせるよい機会だと判断されて、個別指導の時間に、その野菜の絵を描いたり「ナ」「ス」といった文字を書いたりする活動を次々と入れていかれ、最後にそのTくんにとって愛おしい野菜を食べるという展開にもっていかれました。本人が包丁で切り、ナイロン袋に入れて確か塩もみにしたと思います。それまでの給食では、野菜が目の前にくると、顔をそむけ手で顔を覆ってしまうTくんが、ナスを前にしても嫌なそぶりを見せず、素直にそのナスを口に入れたのです。すると、「おいしい!」「オレのナス、おいしい!」と言って、食べてしまったのです。その瞬間を目にした私たちは、「Tちゃんがナスを食べた~!」と大喜びしました。収穫したての野菜は、新鮮なのでそのおいしさもあったでしょう。でも、毎日のように苗に水やりに行き、「大きくなってね」と声をかけて育てた「自分の野菜」だからこそ、「キライ」「苦手」という気持ちを超える「大切なもの」という心が勝ったのではないかと思いました。
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              【小4児童の作品】

 この出来事をきっかけに、Tくんの食事の嗜好は少しずつ変わり、給食を食べる量も徐々に増えていき、同時に、学習面でも文字や数の学習に本格的に取り組むようになっていきました。私は、野菜作りを通して、実はTくん自身の気持ちが耕され、種から芽を出した瞬間を見たような思いにとらわれました。大先輩S先生と一緒に担任を組ませていただき、子供が変容していく様をまざまざと目にした実践が今でも心に残っており、S先生から多くのことを学ばせていただいたと今でも感謝しています。
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 翌日、小6の教室に行くと、8月に行われる三浦海岸共同生活の事前学習ということで、野外調理で取り組むカレーライス作りを行っていました。ちょうどでき上ったカレーを、一人一人お玉でご飯にかけて、自分の席に運んでいるところでした。テーブルには、別皿でプチトマトと、ナス、ピーマンが用意されていて、それをトッピングして夏野菜カレーの完成だそうです。これらの野菜は、学級で作った野菜で、朝摘みした新鮮野菜とのこと。このカレーのおいしさは、間違いなしです。