筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba
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7月4日 初めての「おはよう」の次は? ~Aさんとの朝の挨拶~

7月4日 初めての「おはよう」の次は? ~Aさんとの朝の挨拶~

 1年生のAさんは、おしゃれが大好き。可愛い洋服を着たがり、お母さんの真似をして化粧をしたがったりする。顔に化粧の後をつけて登校することもある。そんな日は、朝の玄関での様子が明るい。何かしら、うきうきする気分が漂っている。ファッションなどというものが縁遠い私などにとっては、よく分からない心境である。

 機嫌よく登校する日も少なくないAさんなのだが、靴を履き替え、手の消毒をして、私のところまでくると、挨拶するのではなく、すり抜けていく。私がAさんを向いて「おはよう。」と挨拶しても、彼女はわざわざ向きを変えて通り過ぎるのである。これは、無視されているかなと、いささか意気消沈ぎみになる。だが、逆に、いつ挨拶に応えてくれるのか楽しみでもあった。

 1週間前、彼女は爪にピンクのマニュキュアをしてきた。思わず顔がほころんでしまうという様子で靴の履き替えをした。歩きだしても笑顔が絶えない。手の消毒をして私のところに来て、この日は止まった。私が「おはよう。」と言うと、かわいい声で「おはよう。」と返してくれた。隣にいたM先生が思わず「初めてですよね。校長先生に挨拶したの初めてですよね。」と大きな声で言う。私も嬉しかった。「Aさん、おはよう上手だね。」とほめる。Aさんの顔がほころぶ。AさんはM先生とともに教室に向かった。

 この1件の後、学校を不在にすることが続いた。今日は1週間ぶりである。Aさんが登校した。今日は挨拶してくれるかなと思って待っていた。機嫌もよさそうだ。私のところまで来て止まった。ここで、私は、子供から挨拶しないかと一呼吸待つのだが、そうしても反応はない。そこで、私から「おはよう。」と言う。それでも反応はない。次の瞬間、Aさんはさっと左手を挙げた。私はその手にタッチした。Aさんは笑顔を見せて教室に向かった。

 今日の挨拶は手を合わせることだった。挨拶には、いろいろな形がある。「おはよう」の後には手と手のタッチ。考えて見ると、言葉の挨拶よりも一歩進んで親愛の情を示してくれたと言えるかもしれない。これからどうなっていくか楽しみである。