筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

人気の玩具を巡る小さなトラブル~幼稚部の遊びから~

 7月3日 人気の玩具を巡る小さなトラブル~幼稚部の遊びから~

 朝、ひよこ組(3歳児学級)を覗くと、5歳児のY君が遊んでいた。プラスチックでできた五角形で何か作ろうとしている。五角形の各辺には、マグネットが仕込まれていて立体を形作ることもできる。この玩具は、三角形や四角形もあって、子供たちに人気の玩具である。

 Y君のそばには、三角形で作られた三角錐や四角形で作られた立方体が転がっていた。三角錐は三角形が4枚、立方体は四角形が6枚使われており、Y君には簡単なようである。私が見たときは、五角形を組み合わせている場面だった。底においた五角形の各辺に別な五角形を立ち上げていく。少し斜め上に開く形になり、不安定さがあり思うようにはいかないようだ。何とか一段目を作り、その上にまた五角形を積み上げていくのであるが、このあたりでY君の両手だけでは足りなくなる。何度か試みてY君は、手伝ってというように、そばで見ていたI先生の手をとる。I先生が組み上がった立体を支えてあげると、Y君は組み立て続けることができた。あと、2枚で正12面体(いびつなサッカーボールのような形)が完成するところまできた。

 とそこへ、3歳児のTさんが入ってきた。Y君の五角形の立体を見るや、猛然とそばに近付き、手を出して何枚か取ってしまった。Y君は、慌てて立体を持ち上げ向きを変えた。Tさんは、立ち上がりぐるっと回ってY君の正面に行き、またもや手を出す。Y君は「やめてー」と言いながら、また向きを変える。Tさんもすばやく追いかける。(写真)
1.jpg

 様子を見ていたI先生は、Y君の思いを叶えることが優先されると判断したようで、間に割って入った。Tさんは、なかなか近付けなくなった。その少しの隙にY君は立体を完成させた。完成品を床に置いたまま、やったと言わんばかりに立ち上がる。そこで、Y君とI先生の気持ちが緩んだ。すると、素早くTさんの手が伸び、その立体はTさんのものとなってしまった。そして、すかさず立ち上がったTさんは、立体を床に落としてしまった。かくして五角形の立体は、バラバラになった。私は,Y君がどんなに激しい怒りを表すのだろうと思って見ていたが、怒る様子はない。彼は、仕上げたことで満足したようだ。

 この玩具、Tさんのお気に入りで、入学式の日から、テーブルにきれいに並べることをよくやっていた。平面にきれいに並べるのがTさん流なのである。Tさんにとって、Y君の立体は、その存在を認められないものだったようである。

 一連の話を担任の先生にすると、最近はそうでもないと言いながら写真を見せてくれた。その数枚の写真には、四角形を平面に並べた後に、それをくっつけて立体を作っている様子が写し出されていた。自分の安定した世界をもちながら、新しい世界に少しずつ踏み出そうとしているようである。きっと、Y君の立体もTさんの頭の中に溜め込まれたことだろう。いつ発現するか楽しみである。