筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

角番校長の挨拶日記その6 ~初めての「おはよう」~

 今年は、残暑の終わりが早く秋の始まりが早く感じられる。朝、玄関に立つと爽やかな風の流れを感じるようになった。子どもたちの服装も少しずつ長いものに変わっていくこの頃である。

 教育実習が終わり、朝の玄関も落ち着きを感じられる。もともとそれ程多くない子どもと教員であるから、実習期間中にはどうしても過密感があるが、いちどきになくなると寂しくもある。朝の玄関は、それが最も現れるところである。

 一方で、過剰な熱気が薄れた玄関では、子どもたちが思わぬ表情を見せてくれることがある。嬉しいことがあった。幼稚部から今年1年生に上がったK君が、今日初めて「おはよう」と発してくれた。靴を履き替え、担任のN先生と私のところに来た。私が「おはようございます」と声をかけると、小さな声だがはっきりと「おはよう」と返してくれた。

 これまでは、私のところに来ても視線が定まらない感じで、玄関の置物などに目が向いていた。担任の先生に促されてもどこ吹く風という表情であった。先日、1年生の教室を訪ねると、K君がビデオを見ていた。私が近づくと、リモコンを渡し、何やら話しかけてくる。N先生に聞くと、ビデオの特定の場所を頭出ししてほしいのだと言う。要求内容が分かったので、その通りにしてやる。K君が求めている歌と踊りのシーンが始まる。K君は笑顔で見ている。そのシーンが終わると、またリモコンを持ってきて同じような言葉で頼まれた。また頭出しをする。5、6回やったろうか、K君は何度も同じ場面を見て満足したようである。次の授業が始まるということで、このやりとりは終わることになった。

 こうしたやりとりの中で、K君は比較的はっきりした言葉を発することがあること、必要なときには人をはっきり認識することが分かった。K君とすれば、こうしたやりとりを通して、いつも玄関に立っている私を認識する機会になったのであろうか。

 K君の自発的な「おはよう」、明日も続くだろうか。明日の朝が楽しみである。