筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

角番校長の挨拶日記その2 ~気持ちを切り替えて

 今年入ってきた1年生も、ずいぶん学校に慣れてきたようで、このところ玄関での一連の流れがスムーズになっていた。だが、今日はちょっと様子が違った。

 Kさんがお母さんに送られてきたとき、担任の先生は、I君のお母さんと話していた。それがちょっと長引いた。Kさんは、送ってきたお母さんと玄関で過ごす時間ができてしまった。様子を見ていた私は、ここは自分の出番だと思い「Kさん、靴取り替えようよ」と誘った。だが、Kさんはお母さんにしがみついていく。誘えば誘うほどしがみつく。

 ようやく担任の先生がI君のお母さんとの話を終え、Kさんのところにやってきたが、今度は、Kさんのお母さんが家庭での様子を先生に伝える。昨日、Kさんがお母さんに、クラスのS君について、「お口イタイイタイした」としきりに伝えたということだ。S君は実際に転んで口周りをケガしたのだという。

 お母さんは、担任の先生からいきさつを聞いて得心がいったようである。だが、そんなやりとりを聞きながら、お母さんにまとわりついていたKさんは、お母さんが離れようとすると、「いやいや」と言って離れなくなってしまった。お母さんと担任は、Kさんが学校での出来事を伝えられるようになったことを喜んでいたようである。だが一方では、お母さんと別れる寂しさを我慢して、学校に向かう気持ちを奮い立たせていたKさんの気持ちが萎えたようであった。

 とうとうKさんは、泣いて玄関の床に寝そべってしまう。お母さんは自分がいなくなった方がいいと思ったようで、その場を立ち去った。先生はKさんにいろいろ話しかけるが、Kさんの泣きは激しくなる一方。靴を脱ぎ、靴下も脱いで足をばたつかせている。先生は、教室で遊ぼうかとか、お友達が待っているよと次の行動を促すがKさんは納得しない。

 そのうちKさんは足の一部を指さして「イタイイタイ」と訴える。さっきのお母さんと先生の会話が心に残っていたようである。担任の先生は、それを聞き逃さず、そうしたKさんの訴えにのっていった。「ここイタイの」と受け止める。そして、「こっち大丈夫」と聞いていく。自分の訴えが受け止められたためか、Kさんは次第に泣き声が落ち着く。ほぼ泣きがおさまりかけたころ、太ももを指して「ここイタイ」という。先生が「お薬ぬろうか」と受け止める。Kさんは、こっくりうなずく。「じゃあ、靴を取り替えよう」と先生が言うと、すんなりと立ち上がって靴の取り替えに向かった。

 どうやら、担任の先生は、Kさんの気持ちを受け止めKさんの表現にのることによって、気持ちの切り替えに成功したようである。