筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

H君の興味

 タイトルを「興味」とすべきか「こだわり」とすべきか迷った。

 他者から見ればこだわっているように見えるかもしれないが、当の本人はいたって真剣であるから、こだわりとしては失礼な気がする。よって「興味」とした。

 H君は6歳児。興味の対象は、コップの水を口に含み、排水溝目がけて発射すること。毎日、これをしばらく繰り返す。担任の先生によれば、登校後の自由遊びの時間に20分位は続くのだという。

 この様子を初めて目にした私は、H君が嬉々として行う様にしばし見入ってしまった。

 口に含む水の量を加減し、口をすぼめて排水溝めがけて発射する。うまく排水溝に入るよう吹く強さ、角度、水の量を調節している。ゴルファーがグリーン上でホールに目がけて打つ、パットに似ていなくもない。

 一口分を終えると、体の向きや角度を変えて試みる。また一口分を終えると、今度は立ち位置を微妙に変える。コップの水がなくなると蛇口から水を入れる。

 そのうち、見ている私に気付き視線を向けるが、何事もないように水を口に含み再開する。しかし、しばらく見て立ち去ろうとすると、あれだけ夢中になっていた行為を中断して、私のところに来て手をとり、元の位置に戻れとの仕草。ギャラリーを意識していたようである。

 H君のこの行為、後で私もやってみた。意外と難しい。H君がやると水はきれいに弧を描いて排水溝に吸い込まれるが、私がやると口から出る水の量も一定しないし角度も定まらない。H君は相当の練習と試行錯誤を行ったに違いない。そして、理想の形を目指し工夫をしたことであろう。

 そう考えると、この行為を「こだわり」と見るのはもったいない。他者から見て役に立つか立たないかは別として、本人の興味の対象であり、工夫と練習の結果到達した現在の到達点なのである。教育の場に身を置く者としては、こうしたH君の興味が広がり、工夫や練習を厭わない彼の持ち味が発揮され、生活を豊かにする道を探していきたいと思う(もちろん生活の主体者であるH君と相談しながらであるが)。