筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

楽しみながら鍛える ~M君のバランスボール運動~

 玄関での朝の挨拶を終え、何気なく3年生の教室に立ち寄った。子供たちは、朝の着替えを終え、朝の会までの10分程を自由に過ごす。それが、この学級のルールである。

 着替えを終えたM君にはルーティーンがある。キーボードを持ち、油性ペンなどを入った籠を持つ。持ったものを机の上に並べる。以前は、たくさんの油性ペンで、ペンの匂いを嗅ぎつつ、布に何本もの線を描くことが彼のルーティーンであった。それが変わった。今は、数本の、今はもう描くことのできなくなった油性ペンを並べるだけである。今日もキーボードと、籠の中身を机の上に並べた。

 並べ終えたM君は、290117_1.png教材庫からバランスボールを出した。バランスボールにまたがると、またがったまま跳び始めた。そして移動する。つまり、跳びながら、バランスボールを動かしていくのである。ボールは常にお尻の下になくてはならない。そのため、ボールの上や横に手をあてて器用に前に送る。

 教室内を一周回った。290117_2.png白板や椅子などの間を上手に通って行く。障害物があるときには、ひょいと立った瞬間に障害物を押しのけ、リズムを崩さずに移動を続ける。見事である。よく見るとM君の右手と左手は同じような動きをしていることもあるが、右手と左手の向きが異なることもある。微妙な調整をしているようである。

 私もやってみた。1回、2回はなんとかできるが、続けるとボールとお尻の位置がずれてしまう。それに、すぐ息が上がって続けられない。M君は、もうかれこれ3分は跳び続けている。途中で、止まることがあるが、すぐに再開する。5分を超えるが汗をかいている様子はない。

 自由時間終わりのベルがなった。彼は、このベルまで10分近く跳び続けた。ボールを教材庫に片付け、そして、机に広げた物を元の位置に戻し、ちょっと遅れて席についた。

 体力づくりのために運動が奨励される。本校の小学部には、毎朝、運動の時間がある。「させられる」運動ではなく、子供が自ら「する」運動にしたい。だが、体を動かしたくない子供に、いかに興味をもたせるか腐心している教師の姿を目にすることは珍しくない。一方で、子供には好きな体の動かし方や運動がある。好きなものから、一緒に行う運動や競う運動に発展していけば、子供にとっても教師にとっても望ましい。

 M君のバランスボールは、そうした運動や競技としての可能性はないだろうか。例えば、バランスボールジャンプ50m競争、バランスボールハイジャンプ、バランスボール幅跳び、バランスボールスラロームなんておもしろそうである。そんなことを考えながら、M君の楽しげな様子に見入った。