筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

兄弟の思い ~自閉症啓発デーin横須賀~

 本校と隣接する国立特別支援教育総合研究所が主催する世界自閉症啓発デー2016in横須賀を、今年も開催した。世界自閉症啓発デーは4月2日に行われるが、横須賀バージョンは、例年、障害者週間に合わせて行っている。今年は、「知ろう つながろう」をテーマに、映画上映、ミニ講義、シンポジウム、作品展示などを行った。100名を超える参加者が自閉症について理解をkeihatsuday1.png深めた。

 映画は「くちびるに歌を」というタイトルで、離島を舞台に、夢破れたピアニストが中学校の臨時教員となり、大会出場を目指す合唱部員との葛藤を通じて立ち直っていくというストーリーである。新しく合唱部に入った男子生徒の兄が自閉症という設定である。兄の送り迎えをするのが弟の役割であるが、合唱部の練習を続けることができないという矛盾を抱える。弟は「僕は、親なき後、兄の面倒を見るために生まれてきたんだ」と言う。その後では、弟は家族に支えられ、自分が好きな合唱に打ち込めるようになり、兄もその様子を感じ取っていく様子が描かれる。ハッピーエンドの結末であるが、私には先の弟の言葉がずしりと響いた。

 映画とその解説であるミニ講義を終えた後は、シンポジウムだった。今年は、兄弟の思いを語ってもらおうということで、本校に弟が通う兄と姉にインタビュー形式でいろいろ聞いた。姉は映画の感想を話した。映画を見て、自分や家族は違うという印象をもったそうである。弟はかわいいけれど、私には自分の人生がある。弟のことを知られたくないと思ったこともあるが、自分の将来の夢は弟の学校で見た先生のようになること、特別支援学校の先生になりたいと話していた。兄は今、部活動で水泳に打ち込んでいるそうだ。そして、休みの日には弟の水泳クラブのボランティアをしている。将来、弟が泳げるようになって一緒に泳げるようになることが夢だ、と話していた。

 自閉症という障害は理解されにくい障害である。だから世界中で理解のための啓発デーをしなくてはならないのが現状である。シンポジストの兄と姉は、いろいろなことを考え、いろいろな場面を経験してきたことも話してくれた。良いことばかりではなかったが、家族で工夫して乗り越えてきたとの話であった。家族の絆を強め、自分の生き方をしっかりもちつつ弟に深い愛情をそそいでいる。弟をはさんで兄弟三人が並ぶステージが輝いて見えた。