筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

プロセスを楽しむアート

 5年生の教室に入る。朝の勉強が終わり休憩時間のようで、S君はipadで動画を楽しんでいた。

 少し離れたところでT先生が作業をしていた。色模造紙を丸く切り出している。その作業を終えると「S君できたよ」と呼びかけた。S君がやってくると、T先生は「あとは自分でやるんだよ」と言って別な子供の指導を始めた。

 そこからのS君の動きは活発だった。281202_1.png私のいだいている彼に対する印象とはかけ離れた動きだった。慎重でゆっくり動くS君、それが今までの印象である。だが、今日は素早く生き生き動いている。絵の具を用意し、少し太めの筆を探し、水を用意した。そして、最後に丸い紙を何やら不思議な容器にセットした。

 S君、まず始めに絵の具をパレットに絞りだした。黄緑を少しと青を少し出す。次に、太い筆に黄緑の絵の具をつけた。すると、その筆を容器に入った黒い紙に持っていき、そっと筆を下ろす。ちょっとだけ黄緑色がついた。するとS君は、容器についている黄色いボタンを押し始めた。押すと容器の中の黒い紙がくるくる回る。当然、黄緑色も回転して、スピードによっていろいろな見え方がする。彼は左目が不自由であるが、右目で回転する黒い紙を凝視している。
 
 S君、急に立ち上がり少し細い筆を持ってくる。今度は青色をつけた。281202_2.pngだが、それは放置したままで白色を絞りだした。量は先程より多い。それを指先につけた。その指先の白色を紙の上に置きこすりつけるようにする。そして、容器の黄色いボタンを押す。初めはゆっくり、だんだん力強く押し回転数を上げる。そうすることによって、模様がどんどん変化していく。

 今度は、絵筆を水に湿らせ、紙の上に置き容器のボタンを押した。すると筆を押し付けている間軌跡が残る。筆を離す。場所を変え、筆圧を変えている。模様がいろいろに変化する。S君は、このアートを真剣に追求している。

 S君は、変化のプロセスを堪能していた。結果として、面白い作品が仕上がり、廊下に飾ってある。だが、S君の追求しているのは、あくまで変化するプロセスのようだ。