筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

終わりの大切さ ~1年生、体調べの学習~

 人間の活動は、始まりがあって終わりがある。始まりと真ん中と終わりで小さな一つの行動となり、それが連なって一まとまりの行動となる。今日、1年生の授業を見て、そんな感を強くした。

 「いきいきタイム」の授業だった。「からだしらべ、げんきしらべ」をテーマに行われた。健康診断で使う器具や測定方法に慣れ、本番に積極的に臨むことができることをねらったものである。

 自閉症の子供に限らず、子供は予測がつかないことが嫌いだし、それが自分の体に直接かかわることであれば強い抵抗を示す。通常、子供はこの恐怖をお母さんという安全基地にしがみつき、「大丈夫だよー」という言葉の支援をたくさんもらってやり過ごす。

 自閉症の子供は、人に抱かれたりすることが苦手だったり言葉の理解が不十分だったりする。だから、新しい事態に対する不安は、通常の何倍も大きくなり、その結果激しい抵抗を見せる。保護者にとって病院に行くことは、それは大変な苦労を伴うことになるのである。

 これに近いことは学校の健康診断でも起こる。服を脱ぎ、身長や体重を図る身体測定、聴診器をあてられたり、鼻鏡で鼻をのぞかれたりする検診もある。そうしたことを予め体験し、前向きな気持ちを育てようというのが、今日の授業のねらいである。

 この後ろ向きになりそうなテーマに、先生が考えたのは、一連の行動を小さな単位としてとらえ、その一つ一つに子供が区切りを作り、次の活動に向かい、一連の活動の終わりにはご褒美があるというものである。

 ご褒美は「ぐるぐるバケツ」である。おもちゃを片付けるのに使うゴム製のバケツに、子供が入って教員に回してもらう。この遊びは、1年生がみんな好きな遊びなのだそうだ。

 まず、A君から。280713_1.pngI先生に名前を呼ばれると、自分の写真カードを貼る。これが最初の行動単位である。できたねと褒められる。A君の表情がほころぶ。

 写真を貼るとI先生は体重計に誘う。体重計は一段高いので、そこに乗るという行動が分かりやすい。A君は勢いよく乗る。これも一つの単位である。そこで先生は「1、2、3」とカウントする。だが、よく聞いていると、3カウントは同じでも子供によって長さが違う。3カウントの間キープすることが大変な子には速くなるし、大丈夫な子には長めになる。そこにさじ加減がある。この乗った状態をキープすることが、もう一つの行動単位となり、二つ合わせて一つのまとまった「体重を測る」という行動になる。

 次に、身長計に移る。280713_2.png身長計の下には電車に見立てた段ボール箱がある。その中に入ると身長計に体を添わせて立つ状態になる。これが一つ目。そして、前を見てもらうために、頭に上に降りてくるガイドの先端にディズニーのキャラクターである「ニモ」のぬいぐるみが吊るしてある。先生が「ニモ」を見てと言うとA君は視線を挙げた。これが二つ目であり、二つで身長が測れることになる。うまく考えたものである。子供にとっては、一つ一つの行動の単位ごとに意味があり、目当てが用意されている。I先生は言葉がけをしているが、何度か経験のあるA君はある程度自分で動けるようになっていた。280713_3.png

 三つ終わった後には、約束の「ぐるぐるバケツ」。A君は、満面の笑顔でバケツに入った。しかし、それを持ち上げる先生の顔には余裕がない。ぐるぐるするには、体重オーバーのようであった。