筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

待望のプール開き

 今年、大きめの簡易プールを設置した。泳げるプールは、子供たちと保護者、そして教員の待望するものであった。これまでは、市のプールを借りるためスクールバスで出かけていたのだが、これからは学校のプールを思いきり使える。

 そのプールが今日から使える。使い始めは5年生。4名の男子ばかりのクラスである。使いはじめということで、私や副校長も参加してささやかなプール開きをすることになった。プールの入り口にはテープが張られ、280706_1.png小さなくす玉が飾られていた。4人は2組になり、テープカットとくす玉に分かれた。

 今日は、曇り空で気温もそれ程高くない。ただ、湿度が高くムシムシする。水に入ったら気持ちがよかろう。水の好きな子供たちの気持ちがはやる。その子供たちの気持ちをちょっとセーブしてもらい、テープをカットし、くす玉を割った。誰からともなく「おめでとう!」の声が上がった(写真)。

 4人はプールサイドに移動した。と思いきや、一人S君だけは中に入ろうとしない。初めての場所に慎重になっているらしい。片目が不自由なS君は、下を向き加減で気持ちの整理しているのだろうか、ときどき顔をあげ、見える方の目でプールを確かめている。

 元気に水に入ったのはY君だった。280706_2.pngプールが大好きなH君は気持ちよさそうに水の中を動き回る。そして、「広い、広い」と言ってはしゃぎまわっている。このプールの設営のために経費の工面から組み立ての陣頭指揮に当たってきた副校長にとっては、なんとも嬉しい言葉だったろう。感情を表すことが苦手だと言われる彼らだが、そんなことはない。「広い」という言葉に万感の思いが感じられる。

 慎重派のK君は、一歩一歩着実に水の中を歩いている。新しい場所のいろいろを確かめているようだ。友達のS君が、プールに入ってくるのを待っているようでもある。

 この日は、介護実習も行われていた。一人で実習生二人を従えていたのはR君。その大胆な水とのかかわりには驚いた。大胆に水にもぐっては顔をあげ、大きな声で喜びを表している。ふだんは、教員にすがるようにしている姿をよく見かけていただけに、プールでの豹変ぶりに目を見張った。

 そうこうするうちに担任の先生に何度も促されたS君が、280706_3.pngプールサイドまできた。教員は「だいじょうぶだから、入ろうよ」とさらに誘うがS君は慎重な姿勢を崩さない。だが、教員が別な子供の指導のためにS君のもとを離れると、S君は少しずつ行動を始めた。そして、ついに水の中に入った。自分で決め、自分で行動に移した瞬間だった。教員もたぶんS君はそうするであろうと見越し、S君の気持ちを大いに揺さぶったあとでその場を離れたようである。自分で考えて決める「間」が必要なのだ。

 プールに入るには少し気温が低い日だったが、そこで展開されるやり取りには熱いものが感じられた。

※後日,5年生の4名が描いた絵を以下に掲載する.プールに入ったときのそれぞれの感情がよく表れているように思う.

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