筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

イメージの広がり

 今年の冬,280617-1.pngリス組(4歳児クラス)のNさんが,2個のブロックで滑り台を表現したことに驚いた。入学当初(3歳)は,なかなか目が合わず,ボールを放り投げる遊びを繰り返していたNさん。滑り台遊びが好きになり,絵本に描かれている滑り台に興味を示し,ブロックで表現するようになった。(写真,平成28年1月27日の本欄参照)。

 進級してウサギ組となったNさん。280617-2.png私がウサギ組の教室に行くと,着替えを終えてブロック遊びをしているところだった。右の階段状のものを作っていた。写真は,ブロック5個を段違いに重ねたものであるが,これは後で写真にとったもので,Nさんは10個以上階段状に組み合わせていた。作ると「オッ」「ポー」のように発声したが,それが意味するものは,私には分からなかった。作ると,目の前にかざした。10個のブロックは安定が悪く,頼りなげに見える。すると次の瞬間,ブロックの入っているかごに落とした。落とすというより,たたきつける感じだ。当然のことながら,ブロックはバラバラになった。Nさんはそれを確かめて,もう一度,同じようにブロックを段違いに組み合わせていった。やはり10個ぐらい重ねると,目の前にかざして落とした。これを飽きずに何度も繰り返した。Nさんは,階段状に作りたい。それを実現するためには,壊れるということがなければならず,それを自分で断行したというところだろうか。遊びとは,そんなものだろう。

 しばらくして,280617-3.png別なものを作り始めた。右のようにT字型のものである。私には,何か分からなかった。NさんはT字型のものを作ると,縦の部分を片手に持って,横長の面を斜めにして,もう一方の人差し指を滑らせるようにした。指を滑らせながら「イー」と発声する。どうやら滑り台を滑っているイメージを表しているのだと推測できた。そこで,私が「シュー」と言うと,私の方をじっと見た。私がもう一度「シュー」と言うと,Nさんは指を滑らせて「イー」と言った。10回もそうしただろうか。Nさんは階段状のブロックと,滑り台の滑る面と思われるブロックを,二つ並べて大事そうに机の上においた。

 そして,教室の入り口にあるコミュニケーション用の絵カードの中から,ブランコの絵カードを取り,それを担任のM先生の所に持って行った。プレイエリアに行きたいとの意思を示したようである。M先生に,それを分かってもらえて笑顔を見せた。

 Nさんがプレイエリアに行ったあと,私も行ってみた。すると,そこでは同じクラスのS君と,それは楽しそうにトランポリンを跳んでいた。ブランコのカードは,プレイエリアの遊びを示していたようである。Nさんは,笑顔で跳びながらも,ときどきS君を見ている。友達への意識も育ちつつあることを感じた。滑り台とそれを滑っているイメージ,いま,トランポリンを友達と跳びながら感じているだろう同調の感覚。Nさんの頭の中でイメージの世界が豊かになっているように思えた。