筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

トマトと中濃ソース

 今朝、出勤時のバスで一緒になったN栄養教諭から嬉しい報告を聞いた。

 「最近、トマトを食べられるようになった子供がたくさんいるんですよ。5年生のR君、3年生のT君、そして2年生のS君とK君の4人です。」との話。

 自閉症の子供には偏食が多い。入学した当初、給食で食べられるのは、白いご飯にふりかけだけという子も少なくない。不思議なのは、白米のごはんが好きな子供が多いことである。また、肉類や魚は好きだけど、野菜類が嫌いという子供も多い。給食の時間は、そんな子供たちが少しずつ食べられるものを広げていく大事な機会である。

 ところで、どうして短期間のうちに4人がトマトを食べられるようになったのか、N栄養教諭に聞いてみた。まず、寄宿舎でR君に何とかトマトを食べさせようと思った指導員が、たまたまほかの副食用に出ていた中濃ソースを、試しにと思いかけてみたのだそうである。信州出身のその指導員の地元では、トマトにソースは珍しくないらしい。そういえば、地元で暮らした子供時代、ソースをかけてトマトを食べていた人がいたことを、私も記憶している。今ほど甘みのなかった昔のトマトには、ソースをかける人が珍しくなかったように思う。試してみたところ、R君は口に入れにんまり。「これはいける」という表情だったらしい。そもそも、フライにソースのような組み合わせにはなじんでおり、ソースも好きだったようである。早速、寄宿舎で話題になり、やはりトマトを食べていなかったT君にも勧めてみた。そしたら、T君も食べられた。

 そんな話が、学校のランチルームで話題になった。聞きつけた2年生の担任がS君とK君のトマトにソースを少しかけた。2人は怪訝な表情をしたが、少し食べてみたらと勧められると口に入れたのだそうだ。

 何日かして、給食にトマトが出たときに、私が4人のテーブルを回ってみると、確かにトマトのあった皿にはソースが残り、トマトはなくなっていた。4人は、中濃ソースの仲立ちでトマトと仲良くなりつつあるようである。

 少し調べてみた。2011年にケチャップで有名なカゴメが調査したところによると、子供の約6割に野菜の好き嫌いがあった。食べてくれない野菜は、1位「なす」、2位「ピーマン」「しいたけ」、3位「水菜」であり、トマトも9位にランクインしていた。お母さん方に子どもの好き嫌いを直すためにどのような方法を試しているか聞いたところ、もっとも多かったのは「味付けや調理を工夫」の66.7%で、その7割が味付けの工夫だったそうである。台所でのお母さんたちの奮闘ぶりが目に浮かぶ。

 本校の4人の子供がトマトを克服したのも、いつもとは違う「味付け」だった。ソースは子供が好きな調味料の一つでもあるらしい。好きなものを仲立ちとしていろいろなものと仲良くなってほしいと思うが、トマトに続く野菜は今のところでてきていないようである。