筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

M文具店での注文

 3年生のM君が、今日も店開きをしている。

 M君に、それ専用にあてがわれた机に、それをいっぱいに拡げている。「それ」は「マッキー」という油性ペンである。机いっぱいに何十本と拡げている。このところ3年生を訪れると毎回この光景を目にする。

 主のM君は何をしているかと言えば、机の前に陣取って、油性ペンのキャップを一本ずつとっては、机に貼っている紙に線を描く。2,3本描く、今度は反対の手にもったキャップを鼻に近付ける。キャップの匂いを嗅いでいるようである。油性ペンだから、シンナー様の匂いがすることだろう。次のペンをとる。同じようにする。休み時間の間、しばらくこれを行うのだそうだ。

 その様子を見て私は、昔、文房具屋さんの店主が、万年筆の書き味を試している光景を思い出した。そこで、「M文具店」という言葉が浮かんだ。

 3年生の教室を覗くと、今日もM文具店が開業している。ふと、今日は、客として参加してみたいと思った。そこで、入っていき、「赤と青ください。」と言ってみた。すると、M君は赤と青を取ってくれた。「ありがとう」と言って受け取り、しばらくしてそれらを返す。次に、「オレンジと緑と黒をください。」と言うと、それも正確に取ってくれた。

 4色を試してみる。「赤とオレンジと青と緑をください。」と言うと、280524.pngちょっと時間がかかったが間違いなくくれた。驚いた。M君は、色や形、数字などの名前を、よく知っていると聞いていた。それらを分類もできるが、出てくる言葉はまだ少ない。しかし、これほどの記憶力があるとは恐れ入った。

 M君は、毎日繰り返す遊びの中で、何に気付き、試しているのであろうか。興味は尽きない。