筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

1年生の教室から締め出し

 今年入学した1年生の様子を窺う。

 入り口の窓から教室内を覗くと、着替えを終え、朝の会までの合間のよう。

 教室内に入って様子を見ていると、K君が私のところに来て、さかんに手を引く。どうやら小さくなれと言っているようだ。

 そこで、少し腰をかがめると、さらに私の手を強く引く。もっと小さくなれということらしい。膝を曲げると、K君は私の膝に足をかけ、首に手をまわし私の肩にあがろうとする。担ぎ上げるとK君は喜んでいる。こうした格好になると回ってやるしかあるまいと思い、勢いをつけてまわると、K君はキャッキャと歓声を上げる。だが、こうした遊びをするにはK君は重量オーバーである。10回も回転すると腰にずっしりくる。そこで降りてもらうのだが、また、やりたいと言って私によじ登る。それから、2度担いで回転した。

 また、やると言ってきたが、もう無理だよと顔の前で手を振り勘弁してくれるよう交渉する。そうしたやりとりをしているところへ、このクラスの紅一点のNさんがやってきて、私の手を引く。これ幸いと私はNさんの誘いに従った。

 すると、教室の入り口まで私を引っ張り、ドアの上についている鍵の方を指さす。「開けてほしい」と言っているようだ。私は、Nさんは外に遊びにいきたいのだろうと思った。

 Nさんに勝手に外に出て行かれては一大事であるから、私は、扉を開ける仕草をして、「開かない」ことを見せた。しかし、Nさんはおさまらず、さらに激しく鍵を開けるように要求する。私もそれまでより力を込めて開ける努力を示した。それでもNさんは納得しない。

 そこで、私は、しばらくの間、Nさんを外に連れ出してもいいかなと思い、学級の先生に、「Nさんと、ちょっと外に遊びに行ってきていい」と告げた。それを聞いた担任のK先生は、いぶかしげな顔をする。そして、何かに気付いたように「あれかな」と言う。そして、Nさんと私を入り口に立たせ鍵を開けた。すると、Nさんは、私に手を振るではないか。自分が出たいのではなく、私に出て行けと伝えたかったようである。あなたの居場所は、「ここではない」ということだろう。

 K君と気持ちよく遊んだあとだけに、少々の寂しさを抱えながら教室を後にした。Nさんに、快く受け入れてもらえる日を心待ちにしつつ。