筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

子供の思いと表現その3 ~電車に夢を乗せて~

 幼稚部の今年の遊びでは、電車が大きな役割を果たした。近隣を走る私鉄を黄色い電車が走っている。ほとんどが赤色と青色の車体の中で、まれにしかない黄色い電車を見ると幸せになれるのだという。


0316①.pngその取組は、電車が大好きなうさぎ組のD君(5歳児)の「幼稚部にも黄色い電車があったらいいなあ」というつぶやきから始まった。幼稚部主事のK先生は「だったら作ろうか」と受け止め、段ボールによる電車作りとなった。

 段ボールの電車は、みんなで乗れる壊れない電車作りへと進化していった。この頃になると、もうD君だけの関心ではなくうさぎ組の友達や、0316②.png4歳児や3歳児のクラスからも電車好きの子どもが集まり、木をきったり色をぬったりの電車作りとなった。

 電車を作り、電車で遊び、電車で移動する生活が幼稚部の中でどんどん広がっていった。車体だけの電車にハンドルができ、窓ができていった。自由遊びの中では、どこでも線路になり、子どもたちは運転士や車掌になった。設定した遊びの中では、0316③.png線路が敷かれ、踏切ができ、駅ができた。また、一クラス6名全員が乗れる電車は移動の道具になった。「集まれ」と言ってもなかなか集まらない子どもも「電車に乗るよ-」と呼びかけると案外素直に応じてくれた。

 電車は運動会にも登場することになった。3歳のひよこ組は青色の電車、4歳のりす組は赤色の電車、5歳のうさぎ組はもちろん黄色い電車、障害物を越え、駅を作り電車に乗り込む姿を披露し、最後には3両が連なってグランドを運行した。子どもたちの笑顔が輝いていた。

 黄色い電車に夢を乗せてきた子どもたちの幼稚部生活最後の仕上げは、やはり本物に乗ることである。年末の1日、子どもたちは短い時間だが黄色い電車に乗った。

 こうした経験を経たうさぎ組の子どもたちは、こと電車にかけては経験を積み自信をつけてきた。最後は、少し遠くまで出かけることになった。約2時間の電車に乗って、いつも遊びに来てくれる東京の視覚特別支援学校の幼稚部に行くことになった。自家用車で出かけることはあっても、電車で遠出をしたことがないという子どもが多く、保護者付き添いとはいえ、保護者も教師も相当心配もしたようである。だが、無事に行って、思いっきり遊んで帰ってきた。また、一つ自信をつけた子どもたちはたくましく見える。

 一人の子どもの思いがスタートとなり、それを少しずつ形にしながらみんなの思いに育んできた。電車という形をとり、電車とともにいろいろなことを表現してきた取組であった。素敵な実践がまた一つ誕生した。D君もうさぎ組の友達もまもなく卒業する。電車に乗せた夢、これからも大きく膨らませてほしい。