筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

サンタ in 幼稚部

 今年2度目のサンタ依頼は幼稚部からだった。トナカイに引かれたそりに乗って登場し、幼稚部で学習したサンタであることを証明する。赤い帽子に赤い服、それに白いひげを付け、プレゼントの入った袋を持参することが必要条件である。証明した後は、子どもたちと歌とダンスを楽しみ、プレゼントを贈るという役割である。

 会場は、リラクゼーションルーム。防音設備があり、光のコントロールが出来る部屋である。それ程広くはないが、クリスマスの雰囲気を醸し出すには好都合の部屋である。子どもたちは、クリスマスソングを歌ったり、サンタの映像を見たりしてサンタの登場を待つ。

 いよいよサンタ登場。数名の子どもが駆け寄ってくる。3歳のS君は「サンタさーん」と言いながら近付いてきて、同じく3歳のH君はサンタの後ろに回り服にもぐりこんでくる。5歳のS君は、サンタは何者だろうという好奇の目で近付く。

 その一方で、幼児用のベンチに座って目を見開いている子どもがいる。目を背けている子どももいる。この子どもたちの中に、校長がサンタに扮してと思っている子どもはいなさそうである。とすれば、子どもたちは、目の前のサンタを本物と思って見ていることになる。サンタに対するイメージが、こうした経験を通して作られることになるだろう。優しく親しみやすいサンタを演じようと思った。

 さて、歌とダンス。子どもたちは、いつになく活動に集中している。幼稚部プレイルームでの集まり活動では、立ち歩く子どもがいるが、今日は、皆がベンチにきちんと座っており、立ち歩くときはサンタに何か訴えることがある場合である。部屋が狭くて余分な刺激がないせいだろうか、サンタが子どもたちの心を捉えているのだろうか。ダンスもほとんど子どもが手をつなぎ、きれいな輪になっている。珍しいことである。

 次は、サンタから子どもたちへのプレゼントである。一人一人に、先生たちがラッピングしたものを渡す。受け取って笑顔を見せる子どもが多いが、近づいたサンタの顔から目が離せずプレゼントを受け取れない子どもや、サンタから目を背ける子どももいる。短時間では、慣れるところまではいかないようである。来年、どのような反応を見せるか楽しみである。

 それにしても、3歳児、4歳児、5歳児ともに、4月から見ると大きく成長している。何週間も泣いていた3歳児が、今や我がもの顔で走り回っている。身近な人に表情をしっかり向けられるようになった子ども、活発に指さしを始めた子ども、言葉が出始めた子どももいる。4歳児は、4月当初、一人一人がばらばらな行動をしていたが、集団としてまとまりのある活動ができるようになってきた。5歳児は、体格がよくなり、3歳4歳児をリードする行動や言葉が目立つようになった。

 もちろん、年齢ごとに揃って成長が見られる訳ではなく、でこぼこがあるが、総じて成長が見られる。そこには、一人一人の子どもごとに成長のドラマがある。先日、5歳のH君について、幼稚部の主事と教室教員が話し合ったことを聞いた。

 4月、H君は、環境が変わったこともあって、混乱し泣いていることが多かった。そのH君に、新しく担任になったK先生は寄り添った。K先生は、H君の思いを受け止め続けた。様々な時期を経て、H君の思いがK先生に向かって発せられるようになってきたという経過であり、今、何が大切だったのか分析しているということである。H君のやむにやまれぬ感情が、K先生という存在を通して人に対する行為に変わってきた、というのである。幼稚部教員は、子どもの成長を促すために、どの子どもについても信頼できる人間関係が基盤として必要だと考えている。

 幼稚部の子どもたちは、安心できる環境でのびのび遊び、生活している。そして、一人一人が確かな成長を見せている。こんな環境でサンタができるのは幸せである。一番大きなプレゼントをもらっているのは、私のようだ。