筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

角番校長の挨拶日記 その4

 角番に立って3か月近くなる。といっても毎日立てる訳ではない。子どもの登校時、私が学校にいるときという限定である。

 3か月の間に見られる変化として一番感じるのは、自分から挨拶する子どもが増えたことである。玄関に入ってきて「おはようございます」と元気に挨拶してくれる子も出てきたし、私の前に来て小さな声を絞り出すように「おはよう」という子もいる。2年生のR君は、お互いの手を合わせることが挨拶であるが、自分から手を出し、私が手を出すことを求めるようになった。これは、R君の挨拶の自発である。

 私から挨拶すれば、すぐに応えてくれる4年生のK君が、自分から挨拶してくれるようになるまでには1か月ほどかかった。K君は、私の方から挨拶しなければ、私の方を意識しながらも通りすぎてしまう子であった。

 彼に、自分から挨拶するようになってほしいと思った。そのために、私からは挨拶しないようにして、向かい合った後、目の動きできっかけ与えたり、口まねをしたりして促すようにした。この辺りの経過は6月9日に書いた。その後、少しずつ私からの働きかけを弱め、可能な限り待つようにした。今日は、目を合わせてしばらく待っていると、小さな声ではあるが「おはよう」と言ってくれた。

 人を意識し、それぞれの人とどのような関わりを持つか、人は生まれ落ちてから、そうしたことを学んでいく。ときには、親から、ちゃんと挨拶しなさいと言ったように教わることもあるが、様々な経験をしながら自ら学んでいくことが多い。対人関係には、明文化されないルール(暗黙のルール)がたくさんある。これを教えることは至難である。挨拶もそうだろう。誰に挨拶をするか、どのように挨拶するかは教えられても、挨拶をする気持ちをもち、それを自発することはなかなか教えられるものではない。そんな心情や態度を育むことは、挨拶の効用を子供自身が感じることによってしかできないだろう。

 限られた場面で「おはよう」を自発してくれたK君であるが、挨拶をして良かったと感じられる日は、まだ先のようである。