筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education School for Children with Autism,University of Tsukuba

【設置の趣旨・使命と教育目標】

 本校は、前身である国立久里浜養護学校当時の実践を踏まえつつ、知的障害を伴う自閉症の子供たちに対して、幼稚園及び小学校に準ずる教育を行い、併せてその障害を補うために必要な知識技能を授けるため、平成16年に筑波大学の附属学校として設置された。
 本校には、約50名の子供たちが在学している。その子供たちの障害の状態及び発達段階、特性等は多様である。そこで、「一人一人の良さや可能性を伸ばし、自立し社会参加するための基礎を培うことを目指す。」を教育目標とし、個々の子供の多様な実態に応じて、適切な指導を行い、それぞれの持っている可能性を最大限に伸長することを本校における教育の基本としている。


【教育活動と特色】

幼稚部の教育

 幼稚部では、子どもたち一人一人の様々な可能性を伸ばし、幼児期という人生のはじめの一歩が、子どもたちにとってかけがえのないものとなるような生活づくりを目指している。
 幼稚部の保育においては、一人一人の幼児に応じて、安心できる環境の中で、人との信頼関係を育み、その上で、人や物とのかかわりを広げ、コミュニケーション能力の向上を図ること、生活全体を通して、自分の好きなことや、やりたいこと、自分のできることを増やし、意欲的、主体的に取り組む中で達成感や満足感を味わうこと、基本的な日常生活動作の獲得を図ることをねらい、指導に当たっている。
 3〜5歳の年齢別の学級を基本の集団とし、一人一人の子供が学級の教師、友達、環境に安心感をもち、自主性を発揮できるよう、学級の子供の実態に応じた日課(内容、時間、場所、体制)を工夫して指導を行っている。
 指導内容のうち「朝の遊び」では、各教室に物を操作して遊ぶおもちゃやままごと、絵本と関連した道具や人形、お絵描きや工作のコーナーを、プレイスペースには、吊り遊具やトランポリン、スクリューカー、ボールなどの運動遊具と季節の掲示物を用意し、子供たちがそれぞれ好きな遊びに向かい、身近な教師と関わって遊ぶことを大切にしている。「遊び活動(素材遊び、音楽遊び、運動遊び)」「なかよしタイム(社会生活の指導)」「のびのびタイム(自立活動の指導)」では、学級を基本にしつつ、子供の興味・関心等の実態に応じてグループの形態で活動に取り組んでいる。「個別の課題学習」と「自立課題」では、一人一人の認知やコミュニケーションの実態に応じて、一対一の楽しい遊びの中に課題を取り入れて指導している。「朝の集まり」や「給食の集まり」、「帰りの集まり」では、集団への参加の基礎を育てるため、活動の中で友達や教師を意識し、一緒に取り組むことに意味をもてるように指導に当たっている。また、年間を通して季節の行事や自然や文化的な体験も大切にして活動内容を設定している。

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小学部の教育

 小学部では、次の4つを指導の柱として、個々の児童の実態や特性に応じた教育活動を展開している。
①心身の調和的発達を目指し、健康で規則正しい生活をする力を育てる。
②身近な大人や友達との関わりを広げ、適切なコミュニケーション力を育てる。
③様々な体験活動等を通して、基礎的な知識や技能を身に付けるとともに、一人一人が気づき考えることを大切にし、感じたことや考えたことを自ら表現できる力を育てる。
④好きなことや得意なことを見つけ、進んで物事に取り組もうとする態度を養う。
 教育課程では、生活活動の指導、社会生活の指導、余暇活動の指導、知的障害特別支援学校の各教科、自立活動等から編成している。特に、「個別の課題学習」として国語・算数・自立活動の内容について、児童個々の実態や課題に合わせた指導を行っていること、「のびのびタイム」として、児童を、低学年・高学年それぞれで実態や課題を考慮した縦割りの学習グループを編成し、小集団の形で自立活動の時間における指導等を行っていることが大きな特色である。

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小学部:運動会「旗を使ったダンス!」


寄宿舎の教育

 本校には寄宿舎があり、県外の東京都や埼玉県や、県内に自宅があるものの、通学が困難な子供たち6名が生活している。教室担任や保護者との連携を密にして、退舎後の家庭生活及び地域生活を見据え、好ましい人間関係を基盤としながら、基本的生活習慣の確立と生きる力の育成を図ることを目指した指導を行っている。また、誕生会やクリスマス会等の各種行事を企画することで、子供たちが楽しく寄宿舎生活を送れるような配慮も行っている。

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寄宿舎:クリスマス会「サンタさん登場!」


【3拠点構想への取り組み】

○自閉症教育の先導的な拠点として

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実践研究協議会:ポスター発表の様子

 平成16年度より2期7年間は、文部科学省から研究開発学校の指定を受け、「自閉症児のための教育課程」に関する開発研究に取り組んできた。特に、幼児期から児童期までの一貫した教育カリキュラムを開発し、その成果を毎年2月に自閉症教育実践研究協議会の場で、全国に発信し続けてきた。平成23年度以降は、「知的障害を伴う自閉症幼児児童のための自立活動の指導~思い、考え、行動する子どもの育成を目指した授業づくり~」をテーマに掲げ、全教職員一丸となって、研究活動や授業改善に取り組んできた。これまでの成果をもとに、自閉症児のための指導法や教材に関しては、「明日から使える自閉症教育のポイント」という書籍にまとめている。
 平成24年度は、アメリカ・ノースカロライナ州ウィルミントンにあるTEACCHセンターから、センター長他2名の教育心理士をお呼びし、自閉症幼児の指導のための研修プログラム「Ready、set、go」を本校向けにアレンジしてもらい、教職員悉皆で4日間にわたる研修を行うなど、全教職員の指導力の向上に向けた取り組みも行った。
 また、国立特別支援教育総合研究所との共催による「世界自閉症啓発デーIN横須賀」を開催することで、自閉症児・者に対する理解を深める活動などにも取り組んでいる。


教師教育拠点として

 学校公開、公開セミナー、研究協議会などには、毎年全国から600名程度の参加者がある。日常的な学校見学を目的とした来校者は、現職教員を中心に800名近くにのぼる。この中で、平成24年度はカンボジア・ボリビア・インドネシア・ドイツなど8カ国から約80名の教員や行政機関の職員、大学の研究者などが視察に訪れた。
 また、大学が主催する「免許状更新講習」事業の附属学校実践演習や「免許法認定公開講座」などにも積極的に協力し、全国の教員研修や教員の資質向上に寄与している。
教育実習や介護等体験は、筑波大学だけでなく、神奈川県下の国立大学などからも学生の受入を行っている。
 平成25年度からは、海外の大学からの研修生や国内の普通校の特別支援学級の担当教員、他の国立大学附属の特別支援学校の教員等を内地留学生として受け入れ、研修を行っている。


国際教育拠点として

 平成21年度より中国浙江省寧波市にある達敏学校(知的特別支援学校)との交流を開始し、同校の教員が本校を訪れ、自閉症児教育の研修を積んだ。その後、平成23年度には、本校の教員が同校を訪問するとともに、併せて姉妹校協定を締結している。
 同校は、中国華東師範大学や附属する自閉症研究センターとの交流も盛んなことから、本校との親密な連携のもと、今後の中国国内での自閉症教育の拠点としての発展を求めており、本校への期待も高い。平成25年度は達敏学校に加え、中国江蘇省蘇州市にある蘇州工業園区仁愛学校と上海市の華東師範大学特殊教育学院と自閉症研究センターを訪問した。今後は、本校での授業場面などのネット配信やテレビ会議システムを利用した両校教員同士での授業研究会、合同ケースカンファレンスの開催などを企画している。

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華東師範大学特殊教育学院にて記念撮影


【主要沿革】

1973.9
国立久里浜養護学校開校(重度・重複障害児を対象とする学校として開校)
2004.4
筑波大学附属久里浜養護学校となる。(知的障害を伴う自閉症児を対象とする学校となる)
2007.4
筑波大学附属久里浜特別支援学校と改称する。